「私、糞便移植を受けます」と書いたところ、読者さまからいろんな反応がありました。
「日本で便移植が受けられると思わなかった」「そんな治療があるなんて」「皮膚炎の息子に受けさせたい」
毎日快便で健康な方はウゲッと思うでしょうが、病気を抱えている方とその家族にとっては興味深い治療なんですよね。
ひと言で糞便移植といっても、大学病院と民間のクリニックでは移植方法が異なります。ドナーの選び方や費用もちがいます。
この記事では、移植について私が知りうる限りの情報をまとめました。

内容はマジメなので、便移植の詳細を知りたい方はぜひご覧ください。
⇒【糞便移植当日!】腸内フローラの移植方法と当日の流れを読む
目次
糞便移植療法を行っている日本の病院
便微生物移植(FMT)は、大きく3つに分類できます。
内視鏡方式で糞便移植を行う大学病院、カテーテルによる注腸方式の腸内フローラ移植臨床研究会、便移植ではありませんが、乳酸菌カクテルを肛門から注入する美容クリニックがあります。
内視鏡方式で便移植を行う大学病院
日本の大学病院で糞便移植の臨床研究が始まったのは、2013年。
便移植を行っている大学病院は8つほどあり、移植は内視鏡を使って行われています。
注腸方式の腸内フローラ移臨床植研究会
一般財団法人 腸内フローラ移植臨床研究会は、2017年11月に「シンバイオシス」という研究所と「全国の臨床医たち」が立ち上げた組織です。
私はこの研究会に所属するクリニックで腸内フローラ移植を受けました。
とにかく研究所のスタッフさんの対応があたたかく、患者に寄り添おうという気持ちが伝わってきました。移植当日まで何度も連絡をくださったこと、本当に感謝しています。
研究会の設立は去年ですが、2010年には腸内フローラバンクを立ち上げていたといいますから、大学病院より歴史が長いのですね。
2018年6月現在、腸内フローラ移植が受けられる病院は全国に10院ほど。東京で受けられるクリニック、私が受けたクリニックはのちほどご紹介します。
腸内細菌叢リセット療法
美容クリニックの中には、腸内細菌叢リセット療法という治療法を実施しているところもあります。
これはドナーの便から採取した腸内細菌叢を移植するのではなく、腸内洗浄をしたあと、0.5~2兆個の乳酸菌カクテルをお尻から注入する方法。
費用は1兆個で28万円、腸内細菌叢という名前はついていますが、便移植とは別物と考えてよさそうですね。
糞便移植の費用と移植方式のちがい
大学病院と腸内フローラ移植臨床研究会では、大きなちがいが4つあります。
- 費用
- 移植前の処置と移植方法
- ドナー選定
- 菌液のつくり方
ひとつずつ詳しくご紹介していきますね。
糞便移植にかかる費用
大学病院 | 移植臨床研究会 |
臨床研究のため、検査費などの一部負担 要問合せ |
研究所のHPをご覧ください |
いちばん気になるのは、移植にかかる費用ではないでしょうか?
大学病院は臨床研究のため、患者が負担するのは内視鏡にかかる料金(保険適応)のみで、ドナーとなる親族のスクリーニング検査は無料という場合があります。
どの大学病院もHPでは費用を開示していないので、詳細は問い合わせるしかありません。
腸内フローラ移植臨床研究会の場合は全額自己負担で、ちょっと気が遠くなるような金額がかかります。新しい治療法ですし、保険が適応されないので当然です。
とはいえ、「病気を治すためよ」という強い意志があっても振り込むときは気合が必要で・・・こころよく賛成してくれた主人には一生、感謝します。
事前準備と移植方法
大学病院 | 移植臨床研究会 |
抗生物質を投与して腸内の細菌フローラをリセット 内視鏡で移植 |
事前準備はほぼ必要なし カテーテルを使った注腸方式 |
大学病院で糞便移植を受ける場合は、事前に抗生物質を内服し、腸内細菌をリセットします。
内視鏡を使用して菌液を注入するため、移植前には食事制限があり、下剤で腸をきれいにする必要もあるようです。
腸内フローラ移植臨床研究会方式は、HPにも記載があるとおり、細いカテーテルを肛門から20センチほど入れるだけの注腸方式。
体への負担が少なく、食事制限や下剤、抗生物質の服用は必要ありません。心配していた痛みもほぼありませんでした。
ドナー選定
大学病院 | 移植臨床研究会 |
2親等以内の親族の便を使用 ※制限のない大学もある |
検査をクリアした、ドナーバンクに所属する健康な人の便を使用 |
腸内細菌叢を提供するドナーは、大学病院は倫理上の観点から親族のみ。
ピッタリの人がいればいいですが、「ものすごく健康でこの人しかいない!」と思える親族がいない場合は辛いかもしれませんね。
腸内フローラ移植臨床研究会は、独自に設立したドナーバンクから患者の症状にあったドナーが選ばれます。
ドナーバンクに登録できるのは、診察及び血液、尿、便など様々な検査をパスした「健康な人」だけ。検査は登録時だけでなく、定期的に行われる点も安心です。
どんな方がドナーになってくれたかは教えていただけませんでしたが「きっと元気で前向きで快便な人なんだろうな」と思いつつ、移植を受けました。
腸内細菌液の精製方法
大学病院 | 移植臨床研究会 |
便を生理食塩水に溶かした菌液 | 溶解水や濃度を独自の方法で開発した菌液 |
大学病院は、便を生理食塩水に溶かした「便懸濁液」というものを移植します。こうやって聞くと、便そのもの・・・な気がしますね。
腸内フローラ移植臨床研究会は「便から食物繊維などの不純物を取り除いた菌液」で、独自に開発した方法で濃度を設定した菌液を移植します。
それぞれのデメリット
大学病院で受ける移植のデメリットは、受けられる病気と人数に制限があって、だれでも受けられる治療ではないということです。
そして、大学病院方式では抗生剤を内服し、腸内細菌の量を極限まで減らして腸内細菌叢をリセットしてから行います。
抗生剤を飲むということは、下痢を伴う可能性があるということ。移植前の下剤や内視鏡での注入も、体に負担をかける可能性があります。
そのため、消化器系症状に苦しむ潰瘍性大腸炎の患者さんのなかには、あえて腸内フローラ移植臨床研究会を選ぶ方もいるようです。
一方、腸内フローラ移植臨床研究会の場合は費用の面で負担が大きいです。移植は病歴や症状によっては回数が多く必要になり、費用がかさむ可能性があります。
また、実際に体験してみると、クリニックと菌液をつくる研究所の連携がうまくとれていないように感じることが何度かありました。
導入したばかりのクリニックは症例数が少ないこともあり、正直、不安はありました。でも、これはしかたがないことだと思います。
糞便移植の効果
2017年に聴講した抗加齢医学会総会では「糞便移植は思うような結果が出ていない」という報告を聞きました。
日本消化器病学会総会では「潰瘍性大腸炎での成績が芳しくなかった一方、クロストリジウム・ディフィシル感染症とクローン病では高い有効性が示唆された」と発表されるなど、効果は限定的なようです。
効果があるとされる病気
大学病院では下記の病気を対象に糞便移植の臨床研究を行っています。
ただし、慶応大学では潰瘍性大腸炎に対する研究は終了しているなど、大学によって違いがあります。詳細は各機関にお問い合わせください。
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 過敏性腸症候群
- ベーチェット病
- クロストリジウム・ディフィシル腸炎 など
腸内フローラ移植臨床研究会では、上記5つの病気に加えて、下記の病気についても治療を行っています。
- 2型糖尿病
- 脂質異常症・高血圧・動脈硬化
- アトピー性皮膚炎・アレルギー・花粉症
- がん
- 精神疾患(うつ病、躁うつ病、パニック障害など)
- 生理痛、生理不順、PMS、更年期障害
- ガンコな便秘・リーキーガット症候群
- 自律神経失調症・慢性疲労症候群・副腎疲労症候群
病歴が長いと完治に時間がかかる
研究所の代表である清水真先生の著書によると、好成績なのは、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、2型糖尿病などでした。
若い人や子供のほうが効果が早く、病歴が長いほど移植の回数が増え、完治までに時間がかかる傾向があるようです。
腸内細菌や糞便移植に興味がある方なら、清水先生の本はかなり勉強になるはず。口コミレビューもいいので、ぜひ読んでみてください。
東京で腸内フローラ移植が受けられる病院
2018年6月現在、東京で腸内フローラ移植が受けられる病院は3件あります。
ほんの数カ月前は1か所もなかったことを考えると、この増え方はおどろくほど早くて、全国に広がるという期待がもてますね。
メディカルキュア表参道クリニック(閉院)
2018/07/13追記:残念ながら閉院になったそうです
私が腸内フローラ移植療法を受けたのが、メディカルキュア表参道クリニックです。
表参道駅から歩いて1分ほど、近くにはロエベやセリーヌ、表参道ヒルズがあるのでわかりやすい場所です。
副腎疲労症候群や栄養療法で有名な宮澤賢史先生が院長を務めるクリニックで、ガン治療や歯髄幹細胞を用いた再生医療も行っているようです。
腸内フローラ移植が受けられるのは月曜日。ドクター以外のスタッフは女性ばかりだったので、安心できました。
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-11-6 地下2階 表参道メディカルセンター内
ナチュラルアートクリニック
2018年4月21日に腸内フローラ移植療法を導入したのが、ナチュラルアートクリニックです。
御川安仁先生は私が所属するファスティング協会の顧問ドクター。栄養療法から副腎疲労、最新のガン検査まで、薬に頼らない治療を幅広く行っています。
私は御川先生のメルマガ読者でもあります。「病気ではないけれど、なんだか不調」という方は、ぜひ購読してみてください。お人柄があふれていますよ。
その他、二子玉川メディカルクリニック、品川にある星子クリニック(女医さんです)でも移植療法が開始されました。
移植を終えた私の感想は・・・
糞便移植といっても、大学病院と民間のクリニックではやり方と費用が異なることがわかっていただけたでしょうか?
次回は腸内フローラ移植を実際に受けた感想をお伝えします。
ご興味があれば、ぜひ読んでくださいね。